感想メモ:回想の野口晴哉

回想の野口晴哉 ちくま文庫(の-7-3)
回想の野口晴哉 ちくま文庫(の-7-3)
  • 発売元: 筑摩書房
  • 価格: ¥ 840
  • 発売日: 2006/03/09

★★★★☆

野口晴哉氏と言えば、整体法の創始者。
この本は、野口夫人が語る野口氏の姿なのだが、
他人の目に映る姿だからこそ、そのすごさが際立つ。

十代で道場を開き、愉気をして両親も含む一家を養っていたという。
その頃のものだという言葉も、とても十代のものとは思えない。

我あり、我は宇宙の中心なり。我にいのち宿る。
いのちは無始より来たりて無終に至る。
我を通じて無限に拡がり、我を貫いて無窮に繋がる。
いのちは絶対無限なれば、我も亦絶対無限なり。
我動けば宇宙動き、宇宙動けば我亦動く。
我と宇宙は渾一不二。一体にして一心なり。

この言葉、「ヨーガに生きる」に出てくる
ヨーガの言葉ととても似ている。
それも、行者が長年の修業の末にたどり着いたという言葉に。
この人は、一体どういう人なのだろう。

また、脳科学も今とは比べ物にならないほど未発達だった時代に、
潜在意識の話が出ているのも驚きだ。
最近でも、それだけで本になっているような話もサラッと書かれている。

だから”念じた通りになる訳はない”と思っている人は、
そう思っていることが実現しているに過ぎないのだろう。
人間は自己の可能性をいつの間にか限界しているのかもしれない。

他にも、野口氏は教育の話もすばらしい。

「一人を丁寧に観ていることだ。
そして子供の眼がいつもいきいき輝いているように導くことだ。
それさえ出来れば、大人は簡単さ。
大人の中にある子供を見て話しかければ、それでいいのだ」

野口氏は育児関連の本も出しているので、詳細はそちらに譲りたい。

また、野口晴哉氏は六〇代半ばで亡くなった。
早く亡くなったのだなと言う印象だったが、
人とは密度の違う人生なので、普通の人の八十年分以上、
いや、百年分以上なのではないかと考えるようになった。

野口氏は、あまりに他の人から離れた境地にたどり着いてしまったため、
深い諦めや孤独の中で生きていたのではないか。
やはり野口晴哉氏は、オンリーワンの異能の人だった。
そして、今の時代にこそ、もっと評価されるべき。
オススメ度は★4つです。

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