- 医薬品クライシス―78兆円市場の激震 (新潮新書)
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- 発売元: 新潮社
- 価格: ¥ 735
- 発売日: 2010/01
★★★☆☆
製薬業界が大きな市場を持つことはなんとなく知っている。
しかし、どんな問題があるのかなどは、あまり知らないものだ。
そんなあなたに一歩進んだ知識を与えてくれる本。
ペニシリンの例は行きすぎだが、昔の新薬開発に比べて
現在の新薬開発は、精度も効率もかなり上がっている。
その一方、重要な分野での薬はかなりの部分が開発済みであり、
残っているのは重要だけれども開発が難しい分野に
限られてしまっているそうだ。
このことが、一発当たると年に数兆円という規模の売上が
可能となる一方で、一生研究しても一度も新薬を創り出せずに
終わる研究者の方が多いという現状につながっている。
盛んに進められている製薬会社の合併も、
莫大な開発コストを支えるだけの体力を持つため、
という側面が大きいようだ。
行政による対応も、医薬品に対する大きなファクターとなる。
例えば南アフリカでエイズが蔓延してしまったのは、
効果が証明されているエイズ治療薬の使用を認めようとしなかった
過去の大統領によるところも大きいようだ。
彼は「西洋の会社が作った医薬などは、
全てアフリカを害するための策略である」と公言し、
ドイツのメーカーによる抗HIV約の無償供与さえ拒絶した。
他にも、タミフルの副作用に関する一連の報道と規制の話は記憶に新しい。
これも、果たして本当に薬の副作用によるものなのか、怪しいようだ。
仮にすべての異常行動がすべてタミフルのせいで起こっていたとして、
異常行動による死の危険は四千万分の二十、すなわち約二百万分の一
ということになる。これは交通事故による死亡率二万分の一、
航空機事故による死亡率五十万分の一より遥かに低い値だ。
初期にタミフルを投与することで重篤化を防ぐという方針が、
日本における新型インフルエンザの死者が少ないという結果に
つながっている、と著者はいう。
業界の概要が理解できる本でした。
オススメ度は★3つです。
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