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感想メモ:貧困の光景

貧困の光景
貧困の光景
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 1,365
  • 発売日: 2007/01/17

★★★★☆

世界での貧困の現実

日本でも、貧富の差や貧困が問題となってきている。
しかしこの本を読むと、世界レベルで見ると
全然良い方なのだとわかった。

  • 私はもうその頃には、集めたお金を海外のどんな組織に渡しても、
    必ず一部は(それも非常に多くの部分を)盗まれる、
    つまり誰かのポケットに入れられるという事実を知るようになっていた。
  • 初めに私は、貧困の定義をしておこう。
    「貧困とは、その日、食べるものがない状態」を言う。
    従って日本には世界的なレベルで言うと一人も貧困な人がいない。
  • 素材で渡すと親たちはそれを栄養失調児に食べさせず、
    その兄姉たちに食べさせるか、ひどい時には、
    それを市場で売ってしまうからである。
  • つまり字も書けない、たし算も簡単な割り算もできない、
    衛生の観念もない、という人は、仮に先進国が投資によって
    何かの工場を作ったとしても、労働力として使えないのである。
  • 「もしHIVがプラスだとなると、親たちはもう、子供にミルクを
    与えないんです。いきる可能性のない子供に与える食事は、
    貧しい家庭にはないんです。」

生まれた瞬間からとんでもないハンデを背負った環境に
生まれてくることを、誰が防げるだろうか?
問題は、「人の命は平等」というような
きれい事では何も解決できない。

一方で、援助のためにお金を渡しても、目的のために使われない。
有力者が懐に入れて、支援したい人に届かない。
届いても、その日の暮らしのために使ってしまう。
教育が最も効果的なのだろうが、今日のご飯に困っている状況で、
どうすれば教育に力を注げるだろう。

月並みだが、日本にこの時代に生まれて良かったと心から思った。
そして、国際援助というのは、ただお金を渡せばいいのではなく、
思ったよりもずっと難しいものなのだとわかった。

認識を新たにしてくれた良い本でした。オススメ度は★4つ。

貧困の光景
貧困の光景
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 1,365
  • 発売日: 2007/01/17

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感想メモ:公務員の給与はなぜ民間より4割高いのか

公務員の給与はなぜ民間より4割高いのか
公務員の給与はなぜ民間より4割高いのか
  • 発売元: 幻冬舎
  • 価格: ¥ 945
  • 発売日: 2008/12

★★★★☆

「公務員は民間よりも給与が高い」とはよく聞くが、
実際にどれくらい高いのだろうか?
賃金・人事コンサルタントの著者が、
様々なデータを元に検証している。

  • 公務員の給与は、30代程度までは民間大企業と同程度だが、
    定年間際まで上がっていくので、50代ではとんでもないことに
  • 愛知県職員(勤続40年)退職金は平均2800万
  • 人事院は自分たちの給与を下げるモチベーションがない
  • 国の給与の調査は、民間の大企業を中心に見るので不当に高く見積もる

 データをどこまで一般化できるのかは注意が必要だが、
傾向としては概ね正しいだろうと判断した。
「請求しても人件費のデータが開示されない」というのは、
何を示唆しているのだろうか。

 この本のもうひとつの楽しみ方は、読者の反応である。
amazonのレビューも、賛否両論あっておもしろい。
反応が多いということは、ある程度真実が含まれているのだろう。

 結論としては、やっぱり高いのだろう。
役所の人が民間に比べて特に能力が高いとも思わないし(逆も)、
それで給与に差があるのを見ると、割がいいと思うのが普通だろう。
だからこそ「息子は公務員に」となるわけで。

知っていて損はない知識が得られる本。
オススメ度は★4つ。

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感想メモ:天才! 成功する人々の法則

天才!  成功する人々の法則
天才! 成功する人々の法則
  • 発売元: 講談社
  • 価格: ¥ 1,785
  • 発売日: 2009/05/13

★★★★★

天才を天才たらしめているものとは?

それは、才能と超人的な努力、だけではないのかもしれない。

  • NHLの選手に1月生まれが多く、日本のプロ野球やサッカー選手に
    4月生まれが多いのは、偶然なのか?
  • アメリカの大富豪のうち何人もが、数年という狭い範囲に
    生まれているのは、偶然なのか?
  • ユダヤ人のビジネス成功者の家系を遡ると
    同じような職業が現れるのは境遇が多いのは、偶然なのか?
  • IQが130を超える人たちの中で、成功する人としない人を
    明確に分けるパラメータとは?
  • アジア系の人が数学に強いのは、遺伝ではない?

いずれも「環境」というものが、天才と言われる人たちにも
大きく影響している事を示している。
つまり、同じぐらいの才能を持っていても、
生まれてきた環境が違うだけでアウトプットは変わってしまう!

それでは逆に、生まれ育った環境ですべてがきまってしまうのか?

著者はそうは言っていない。
教育によって「生まれてきた環境」という運命に近いものをも
切り開いていくことができるのだ、と示している。

私たち一般人は、「天才」という言葉を聞くと、
イコール才能、と思考停止におちいってしまいがちだ。
しかし環境や社会的な背景が与える影響というのは
思いのほか大きいものなのだとわかった。

1万時間という時間の壁を越えられる適性があれば、
案外「天才」はできてしまうのかもしれない。

子供にプラスの影響を与える環境とはどういうものなのか?
何を与えることができるのか?そんな視点で読むこともできる。
オススメ度は★5つ!おもしろい本でした。
Amazonのページにある著者のインタビュー動画もおもしろいです。
すごい賢そう。

同じような視座を与えてくれる本として、
ヤバい経済学、銃・病原菌・鉄を連想した。

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感想メモ:子どもの貧困―日本の不公平を考える

子どもの貧困―日本の不公平を考える (岩波新書)
子どもの貧困―日本の不公平を考える (岩波新書)
  • 発売元: 岩波書店
  • 価格: ¥ 819
  • 発売日: 2008/11

★★★★☆

少子化対策にスポットが当たってきている。
担当大臣に「子供を持たない選択」とか言っていた人がなっているのは
内閣一流のジョークなのだろう。おもしろくないが。

さて、少子化対策と同様に、せっかく生まれてきた子供の幸せについても
考える必要があるだろう。
できるだけ幸せに育って欲しいと思うのは、誰しも同じだろうから。

しかしこの本では、あまり一般に知られていない衝撃的なデータが
いろいろと紹介されている。

まず、日本の母子家庭における貧困率の高さ。世界的に見ても有意に高い。
日本の労働市場の、女性や年配者に対する不条理な厳しさが現れている。
その結果、日本の子供の貧困率は15%近くとかなり高い。
6,7人に一人の計算。これは多い・・・

また、国の制度も問題が多い。
貧困世帯の税負担が、逆に多くなってしまっている。
そして、貧困世帯に育った子供は、将来にもその影響を受け続けてしまう。
いくら金持ち優遇とは言え、これはあまりによろしくない。

子供手当て政策も、ROIを考えるとより重点的に配分する方が
良いのではなかろうかと感じる。

知らないものは問題であることすら認識できない。
読んでおきたい本。オススメ度は★4つ。

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感想メモ:詐欺師のすべて

詐欺師のすべて―あなたの財産、狙われてます (文春文庫)
詐欺師のすべて―あなたの財産、狙われてます (文春文庫)
  • 発売元: 文芸春秋
  • 価格: ¥ 550
  • 発売日: 2002/07

★★★☆☆

詐欺。
あまり人生において遭遇したくない物の一つだ。
しかし自分がプロの詐欺師に目をつけられてしまったら?
対策としては、やはり相手の手口を知っておくことだろう。

普通の人は詐欺についてあまり詳しくないだろうが、種類としては
林真須美のヒ素カレー事件で有名な保険金詐欺を始め、
土地、契約書、有価証券偽造、商品のパクリ、無銭飲食・宿泊、などなど限りない。

手口としては、訪問販売、電話勧誘、マルチ商法、点検商法、
景品付き販売、当選商法、などなどこちらも限りない。

詐欺のプロは、ターゲットが他の人に相談しないように、孤立させようとする。
従って、こういった知識を持っておいて、自衛するしかない気がする。

「最後に詐欺の鉄則十五箇条」が興味深いので紹介しておく。

  1. 「自分は詐欺師ではないとの信念を抱け」
  2. 「演技力を磨け」
  3. 「権威を利用せよ」
  4. 「人の弱みをにぎって活用せよ」
  5. 「無価値のものを価値あるように見せかけよ」
  6. 「真実を核にして嘘を構築せよ」
  7. 「最初はまともな話で相手を安心させよ」
  8. 「騙すなら徹底して騙せ」
  9. 「前科のない者を表に立てよ」
  10. 「必要なら契約書をつくって安心させよ」
  11. 「相手をあわてさせ、冷静さを失わせよ」
  12. 「あらゆる手段を使って時間を稼げ」
  13. 「引き際を心得よ」
  14. 「強い返済要求には応じよ」
  15. 「騙し取った金は隠しとおすか使い切れ」

あまり読んでいて楽しくはないが、生きていくには必要な知識かも。
オススメ度は★3つ。

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感想メモ:日本語と韓国語

日本語と韓国語 (文春新書)
日本語と韓国語 (文春新書)
  • 発売元: 文藝春秋
  • 価格: ¥ 735
  • 発売日: 2002/03

★★★☆☆

日本語はどの言語とも似ていないと言われるが、
韓国語とは文章の構造や単語など、共通する部分が多い。

そういった日本語と韓国語の共通点や異なる点、
言語の文化的な背景や最近の風潮などを説明している本。

歴史的な背景などから、複雑な関係にある日本と韓国だが、
お隣の国であることに代わりはなく、知っておいた方が良いことは多い。
例えば、韓国の人は「朝鮮」と言われるのを嫌うそうだが(例:高麗人参)、
北朝鮮の人は「朝鮮」と言う言葉に悪い意味は感じないそうだ。

同時に、タイトル通り日本語と韓国語についての雑学的な知識も得られる。
例えば日本で同音異義語の釜、鎌、鎌などが韓国語でも同音異義語である、とか。
しかし漢字は同じでも意味は異なるものもあるようだ。

日本人として知っておいた方が良いことは多いと思った。
読んでおくとよいと思う。★3つ。

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感想メモ:ダーリンの頭ン中 英語と語学

ダーリンの頭ン中 英語と語学
ダーリンの頭ン中 英語と語学
  • 発売元: メディアファクトリー
  • 価格: ¥ 998
  • 発売日: 2005/03/04

★★★☆☆

「ダーリンは外国人」シリーズの番外編?
ダンナさん(トニーさん)はえらい語学マニアなようで、
英語、日本語、などなどいろんなトリビアを教えてくれるマンガ。

  • ネイティヴは母音の前の「the」を「ジ」と読むとは教わらない
  • 「ジ」になることが絶対的に正しいとは言えないが
    無意識に「ジ」になっていることがある
  • 何をどのくらい「ザ」と言うのかは国や地域、
    または環境などによって違う

これは衝撃!日本人の9割以上が「ジ」と習っているというのに!

他にも小ネタがいっぱい。
「#」って、ナンバーでもシャープでもあると思ってたら、
違うんだってさ!

というわけで★3つ。

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感想メモ:人間性の心理学

人間性の心理学―モチベーションとパーソナリティ
人間性の心理学―モチベーションとパーソナリティ
  • 発売元: 産能大出版部
  • 価格: ¥ 5,250
  • 発売日: 1987/03/10

★★★★☆

「マズローの欲求階層説」で有名なマズローさんの本。

この500ページを超える本は、対象は欲求だけではなく、
動機付け、神経症、心理療法などかなり幅広い。

欲求階層説は有名なので、どこかしらで聞いたことがあるだろう。
以下のようなものだ。

  • 欲求の5段階のヒエラルキー構造
    生理的欲求
    →安全の欲求
    →愛の欲求
    →自尊心の欲求
    →自己実現の欲求

詳細はWikipedia参照→自己実現理論 – Wikipedia

実際に読んでみると、この5段階は絶対的な順序ではないようだ。
人によって前後したり、あるものが強かったり強かったりするらしい。

欲求について、他にも以下のようなことが書かれていた。

  • 高次の欲求は、系統発生的にも、
    個体発生的にも、後から発達したもの
  • 高次の欲求ほど緊急性は低い
  • 高次の欲求を満足することにより、望ましい主観的結果
    ー真の幸福、平静さ、内的生活の豊かさーがもたらされる
  • 高次の欲求の満足は、低次の欲求よりも自己実現に近い

この自己実現を達成した「自己実現的人間」が
どのような特徴を示すについても、
かなり詳しく説明されていた。

上で触れた通り、欲求以外についてもたくさんのことが書かれている。

  • 充足状態は結果として、必ずしも保証された幸福とか
    満足の状態になるとは限らない
  • 欲求が満たされることも、満たされないことも、
    性格形成に影響を与える
  • 幼児期における愛の剥奪は病気を引き起こす。
    これらの病気は、子供のうちには慈悲と
    愛情のこもった親切心を与えることで治療できる

ということで、人間の心理に関する様々な考察が
盛りだくさんに提供されている。

なにしろボリュームがものすごいので、
軽い気持ちで手に取るのは難しい。
心理学に興味があり、かつ時間と気力があって、
初めて立ち向かえるだろう。

内容は文句なしに充実しているのだが、
そんな訳でかなり手強いので一個減らして★4つ。

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感想メモ:新教養主義宣言

新教養主義宣言
新教養主義宣言
  • 発売元: 晶文社
  • 価格: ¥ 1,890
  • 発売日: 1999/12/25

★★★★☆

教養。ないよりある方がいいに決まってる。

それではなぜ、自分は教養があると
自信を持って言えないのだろうか?
それは教養がないからだ。

代わりにあるのは、ドラえもんの身長体重とか、
ドラクエの呪文の消費MPとか、
およそ教養とは言えない知識とかだ。

それではなぜ、役に立つと思われる教養的な知識ではなく、
よくわからない謎の知識がしっかりと長期記憶に
インプットされてしまうのだろうか?

答えは簡単だ。
興味がある(あった)からだ。

逆に、なぜつまらなかった授業の内容が、
期末試験を受けたはずなのにも関わらず、
かけらも記憶が残っていないかというと、
興味がなかったからだ。

そして問題は、興味がないことに興味が湧かせることが
とても難しいところだ。
これができれば最強だと思うのだが、どうすればいいんだろう。

以下、メモした部分。

  • でも一番根っこのところで僕がよりどころにしたいと思っているのは、
    なんと言うべきか、おもしろさとか、心のときめきとかいうやつなんだ。
  • いつだって、伝えるべきなのは、教養そのものじゃない。
    その教養の持つ力であり、おもしろさだ。
    それがわかれば、みんな黙ってても勝手に自分で勉強するようになる。

情報について。

  • 情報は、何か意思決定して行動するためのツールとしてのみ意義を持つ。
    価値があるのはその意思決定なのだ。

その通り。だからこそ、教養をつけるためだけの
勉強なんていうものは、続く方が不自然なのだ。

  • 情報投資をいくらしても、生産性は実は全然上がらないのだ。
  • コンピュータがいくら使いやすくなったところで、
    意思決定は、そしてそれに伴う各種の行動が
    加速することはないだろうと思う。
    人間がこの世の主役である限りは。
  • 結局のところ、人は腹を決めるための時間が必要なのだ。
    「情報が必要だ」というのは実は、
    「時間が必要だ」と言っているだけなのだ。

このあたりの意見もおもしろい。

ここまでは前半1/3くらいまでなのだが、
その後は興味が湧かず、走り抜けてしまった。
教養がない私の教養への道のりは長いということで★3つ。
文学が好きな人とかは、もう少し評価が高くなるだろう。

やっぱり楽しくないことは続かないな・・・。

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感想メモ:本を読む本

本を読む本 (講談社学術文庫)
本を読む本 (講談社学術文庫)
  • 発売元: 講談社
  • 価格: ¥ 945
  • 発売日: 1997/10

★★★★☆

「本を読む」ことについてもう一度考えてみる

本書では、読書を4つのレベルに分けている。

  1. 初級読書
  2. 点検読書
  3. 分析読書
  4. シントピカル読書

1.は、読んだ内容を理解することができるという、読書に必要最低限のレベル。
2.は、本の内容を素早く把握することができるという、斜め読み、拾い読みといったレベル。
3.は、内容を丁寧に検討し、著者の主張を検証しながら読むレベル。当然時間がかかる。
4.は、同じトピックに関して複数の本を読むレベル。その分野に関する理解が深まる。

私の考えでは、この2.分析読書をできるかできないかが、
その人の読書量に大きく影響する。
というのも、全ての本を精読していたら、
「本を読む」ことの時間的、精神的なコストが、
非常に大きくなってしまうからだ。

読むべき物は読む、読まなくていい物(少なくともその時点では)は軽くスルーする、
というメリハリが、本と付きあっていくために重要だと思う。
読書が人生に与える影響が大きいと考えるならば、
この点検読書を身につけることが、
人生に影響を与えるものすごく大きな一歩になる。

その分析読書のキモだと思われる部分を紹介しておく。

  • 精神というこのすばらしい人間の道具は、
    ただ目を通して必要な情報が与えられさえすれば、
    本の一目でひとつの文または一つのパラグラフさえも
    つかみとることができる。
  • だから、読者の精神の働きを妨げる目の固定や逆戻りを
    まず第一に修正しなくてはならない。
    幸いなことに、これは簡単に直せる。・・・
  • 目を固定する癖をなおすには自分の手を使うだけでよい。
    自分の手をページの上において、
    それを段々早く動かす練習をする。

確かにこれだけでかなり早く読めるようになる。
かつ、そこそこ文意が把握できることに気づくだろう。
実は、もっと早くやっても結構把握できる。
(参考:フォトリーディング)

1978年の本だが、内容は現代でも全く通用する。
これは良著であることの証だろう。★4つ。

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