W.ティモシー ガルウェイ
日刊スポーツ出版社 2003-05
¥ 1,575
★★★★★
自分が持つ能力を十分に発揮し、夢中になって働く。
そんな「ワークフリー」の状態を実現するためには?
- あなたはなぜ働くのだろうか?
- どんな風に働きたいのだろうか?
- 自分の人生のハンドルは、自分で握っているか…?
日頃考えない、というより
考えないようにしている質問に、
向き合わざるを得ない。
「セルフ1」と「セルフ2」
「インナー」シリーズの話のベースとなるのがこの考え方。
以前の著作である「インナーゲーム」は、
テニスコーチとしての気付きから、
「セルフ1」と「セルフ2」という考え方を提唱している。
簡単に言うと、
「コーチが生徒に技術を教える」
という一般的なやり方ではなく、
「生徒に質問し、気付かせ、能力を引き出す」
というスタイルの方が、高い成果が得られたのだ。
詳細はこちらを参照のこと。
→感想メモ:インナーゲーム
この考え方は、スポーツだけでなく仕事にも適用できる。
他人に対しても、自分自身に対しても。
というのがこの本の内容だ。
興味深い話が多かった。
以下、引用ばかりになってしまうが、
面白かったフレームワーク的なものを紹介していく。
ACTトライアングル(知覚、選択、信頼)
1. 知覚する(Awareness)
良い/悪いの判断を交えない。
「悪いところを直そう」とするのではなく、
あることに気をつけてみるだけ。
例えば、1~10の10段階評価をしてみる。
直そうとしなくても、知覚するだけでも結果が改善する!
2. 生徒に習得の選択権を残す(Choice)
生徒が、答えを与えられるのではなく、
学習と変化の主導権は自分が握っている、という自覚。
3. セルフ2を信じる(Trust)
持って生まれた能力を信じる。
ものごとを習得する際の主役は
コーチではなく生徒本人の内側の能力。
質の高い集中をするために
熱中し、時間も忘れて没頭するような集中状態。
子供の頃はしばしばそうなっていた記憶があるが、
大人になると少なくなっているような気がする。
あの集中力を取り戻すにはどうすればいい?
- セルフ1の声には耳を貸さず、黙っていてもらう
- セルフ1の気をそらす
- 強制しない。集中は興味から生まれる
- 評価や批評をしない
- 必要十分な安全性(安心感)と必要十分なチャレンジ性(困難さ)
PLEトライアングル
- Performance 能力発揮
- Learning 学習
- Enjoyment 歓喜
これらは対立するものではなく、
相互依存の関係にあるという。
そして、仕事に対して両立させるべきだと。
しかし残念ながら、業務において
従業員の歓喜を求める企業は多くない。
働くとは、自分の本質であるセルフ2の欲求のままに
「能力を発揮し」「学習し」「歓びを体験する」
ことだと再定義できれば、ワーク・フリーへ大きなステップになる。
その瞬間その瞬間に歓びを感じることが私のプライオリティだ。
…
楽しんで仕事したときほど結果も良いし、
周囲に対する貢献度も高い。
この「利己的」は、個人と会社両方の「利」のためなのだ。
仕事での歓びの質を高めるための第一段階は、
ただ単にその現状に目を向けることで十分だ。
楽しい方が良い仕事ができる。
きっとその通りだ。
それを測る方法が、エンジョイチャート。
仕事中の心の状態 各状態の時間の比率(%)を記録してみる。
歓喜(8~10)
中間(4~7)
悲惨(1~3)
あれ・・・?歓喜がない・・・
動く能力モビリティ
1.自分にモビリティを認めよう。モビリティは誰もがすでに持っている
2.自分がどこに行きたいのか、最も明確な絵を描こう
3.自分の変化の中で変化する意欲を持とう
4.自分の目的をクリアに保とう
5.自分の動きと方向をシンクロさせよう
動く自由。
誰も束縛していないにも関わらず、
動く前からあきらめてはいるのはなぜだろうか?
あるいは、動けるという可能性について、
考えることすらないのはなぜだろうか?
インナーワークの第一のステップは、
自分が運転する車は「動く」ことが
できるのだと認識することだ。
2番目のステップは、その車は
「自分の車」であることを理解することだ。
可能性を閉じているのは自分自身だと
気付く事なのだろう。
STOPツール
- STEP BACK
- THINK
- ORGANIZE YOUR THOUGHTS, AND
- PROCEED
目的地を決めずに走り始めるのは、
汗はかけるが目的地に近づけたかはわからない。
例え数秒でも、何かを始める前にショートSTOPを取り、
それが本当にやるべきことかを考える。
これだけでも効果がある。
コーチング
・「入れ替わり」の技術
生徒の立場に立って考える。
生徒が「考えること、感じること、望むこと」を想像してみる。
だいたい、欠点を指摘されることは望んでおらず、
コーチが言ったことを上手くできるようにしてしまう。
その緊張がパフォーマンスを阻害しているとしたら?
・3つの対話
知覚のための対話:オープンな知覚ができるように
選択のための対話:義務よりも主体性を持てるように
信頼のための対話:内側の障害を取り除けるように
ハンドルを握るのは本人。コーチは助手席。
・コントロール
今コントロールしているのは何か
今までコントロールしようとしていたのは何か
コントロールしなかったものの内で、今後できるものは何か
・フィードバック
査定ではない。事実がどうなったかを質問するだけ。
「教える」とは知識を伝えることで、
長い時間を必要とします。
コーチングはそうした足し算ではなく、むしろ引き算です。
目標に向かう際に必要となるものを除去する作業です。
全く知らずに読んだのだが、
このガウェインのインナーゲームの考え方が、
コーチングの源流であるようだ!
・インナーゲーム – Wikipedia
・現代の倫理道徳 Q&A<2002-44>
コーチングの技術を表面的に知るだけでも意味はあるだろうが、
その技術がどういった背景から生まれてきたのか、
セルフ1とセルフ2の考え方を知っておくだけでも、
理解の深さが全く異なるはずだ。
久々に、かなり時間をかけてじっくりと読んだ本だった。
最初はとっつきにくいかもしれないが、
読み進めるに連れて、どんどんおもしろくなってくる、
深い本でした。
「働く」ということについての様々な気付きを
数多く与えてくれる本でした。
オススメ度は★5つです!
W.ティモシー ガルウェイ
日刊スポーツ出版社 2003-05
¥ 1,575
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