★★★★☆
かなり旬は過ぎた感があるが、一応。
著者は高橋伸夫、東大経済学部教授。
バブル前後を含め、数十年経済学界に身を置いてきた著者の主張は簡潔だ。
「人は金で動くのではなく、金銭を仕事の動機付けにするのは間違いである。
『お金は年功主義で保証し、仕事で報いる』という日本型年功主義を見直そう」
というもの。
このことを示す上で非常に興味深かったのは、ある実験例で、
被験者にパズルを4セット解かせるというもの。
2セット終わった所で自由時間を入れるのだが、
休憩時までに解いた数に対して報償を支払う場合(A)
と
報酬を支払わない場合(B)
で、自由時間の過ごし方に差が見られるというのである。
(ちなみに休憩時間は実験者は部屋から出て行き、周りに人はいない)
差というのは、
「片方が自由時間にパズルを解かず、休憩を取る割合が多い」
というのだが、
それは、休憩が多いのは報酬が支払われた(A)か?
と思うとそうではなく、なんと(B)の方なのである。
(A)の場合は「報酬のためにパズルを解く」事になるのに対し、
(B)の場合は「パズルを解くこと自体が楽しい」状態になるからなのだろう。
これは誰しも経験がある、
「同じことでもやらされるとたのしくなくなる」
というやつだろう。
人が最高のパフォーマンスを発揮するのは、
お金のためにがんばっているという状態ではなく、
「そのこと自体が好きであるため、いくらやっても苦にならない」
という状態なのだろう。
成果主義ではこういう状態になることの助けにならず、
むしろ年功制で生活に対する保障をした上で、
仕事の内容で報いる日本型年功主義の利点を
再確認することが必要なのだという。
金銭が全くモチベーションになることはない、
と言っているわけではないが、
弊害の方が多いですからやめた方がいいですね、という話だ。
人のパフォーマンスを上げる「動機付け」についての理解が深まる上、
日本型経営についても興味深い、良著でした。
日本で導入された成果主義は、成果主義の皮をかぶった
人件費削減であることが多いので、そこを切り分けてから
議論する必要があるような気もするが。
ちなみに2008年6月の著者のインタビューでは
と言ってる。こういう本を出したのだから
しょうがないと思うのだが…
オススメ度は★4つです。
知っておいて損はないです。
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