「★★★★」カテゴリーアーカイブ

感想メモ:42.195kmの科学

NHKスペシャル取材班
角川書店(角川グループパブリッシング) 2013-02-09
¥ 820

★★★★☆

運動好きならば観たであろう、
NHKの「ミラクルボディー」シリーズ。

そのマラソンの回の内容について、
番組では紹介できなかった取材内容やデータも含め、
紹介されている。

特に「効率の良い走り方」についての、
マラソン世界記録保持者の科学的なデータ、
専門家による分析に注目した。

マカウの肉体は、マラソンを走っている間でも
乳酸が過剰に蓄積しない。つまり、マカウは
1km三分を軽く切るペースでマラソンを走っていても、
足に疲労を感じることなくフィニッシュまで辿り着いている
可能性があるということです(p89)

なんと!マラソン走っても足が疲れない!?どういうこと?
その秘密は「ミラクルに効率の良い走り方」にあるそうだ。

そのポイントの一つは姿勢。

マカウの走りで、まず目を引いたのは、きれいに直立した姿勢である。
真横から見ると、頭から首、胴体(体幹)が一直線となり、
足も、腰(重心)の真下からやや前方に着地をしている…
肩甲骨を引き、下腹部を引き締め、腰の位置も高い。(p91)

確かに、効率が良いのは一直線だろう。

次のポイントが、着地。

マカウは足の小指から着地し、
つま先全体で地面を捉えて蹴りだしていることが確認できた。
かかと(踵骨)には、ほとんど体重が乗っていない。(p98)

つま先に近いマカウの着地の方が、
体に受ける衝撃力が、約40kg分も少なかったのである(p102)

マカウはソフトにつま先から着地をすることで
ブレーキがかかるのを防ぎ、
その結果、より少ない力でスムーズに重心を
移動することが出来ていたのである。(p107)

いわゆるフォアフット着地。
データとしても、衝撃が小さいと確認された。

ただしこれは、幼少時から裸足で過ごすことで、
その走り方に足が適応していることもあるようだ。

マカウは、足の指を曲げたり、土踏まずを支えたりする
「深部底屈筋群」(後脛骨筋、長母趾屈筋、長趾屈筋)が
非常に発達していた(p123)

踵着地よりも、足の中心着地や、
つま先着地のランナーの方が、
走力が高いというデータもあるそうだ。

それは、つま先着地により足が鍛えられる、
という側面もありそう。

足底のアーチ・サポートや
硬いソールを備えたランニングシューズが、
足や土踏まずの筋力の低下を招き易くしたした(p124)

ランナーや運動好きの人には、かなり楽しめる内容。
オススメです。

NHKスペシャル取材班
角川書店(角川グループパブリッシング) 2013-02-09
¥ 820

感想メモ:外反母趾は包帯1本で治せる

★★★★☆

外反母趾では、親指が人差し指の側に曲がってしまう。
かかる人は、女性が多い。
様々な治療法があるが、治すのは難しい。
こんな印象。

この本で紹介されている治療法は、
包帯を巻くだけという手軽さ。
そしてそれでも効果があるというのが驚き。

母趾外転筋と母趾内転筋のバランスが取れていれば、
足の第一指ははまっすぐに伸びています。
ところが、開張足でそのバランスがくずれ、
内側のほうへ引っぱる力のほうが強くなると、
足の第一指が第二指側に曲がってしまう…(p24)

簡単に言うと、

  1. 足の甲の筋肉が弱まって、足が広がる(開帳足)
  2. 親指を人差し指側に引く筋肉が、強く引っ張られる
  3. 親指を外側に引く筋肉が弱る

→親指が人差し指側に曲がる
という感じ。

1の、「足の筋肉が弱くなる」ところが元凶であるようだ。
そこで、伸びる包帯で足の甲をグルグル巻くことで、
親指が人差し指側に引っ張られないようにして、元から断つ。
対症療法ではないので、時間はかかっても効果がありそうだ。

本当は、裸足で凸凹な道を歩くのが、自然のトレーニング。
が、そうも言ってられないので、ウォーキングしたり、
お風呂で揉んだりして、筋肉のバランスを整える。
バランスが崩れてしまったら、包帯を巻いてサポート。
ということになるのだろう。

外反母趾に悩んでいる人や、
私のような体・健康マニアの人にオススメです。

感想メモ:実践 行動経済学

リチャード・セイラー,キャス・サンスティーン
日経BP社 2009-07-09
¥ 2,310

経済学は、
「人間は完全に合理的な行動を取る」
と仮定している。
しかし、自分のことを考えればすぐわかるが、
そんなことはない。

さっさとやればいいと、頭ではわかっていても逃避する。
時間のムダだと思うことに没頭する。
10円の節約をして10000円の無駄遣いをしたりする。
何より「めんどくささ」にものすごく弱い。

だって人間だもの。

では、その人間らしさを考慮したらどうか。
具体的には‥

  • 選択肢を多くしすぎない
  • デフォルトの選択肢を推奨されるものとする
  • 選択肢の検討は、可能な限り簡単にする

など。

こういったことによって、
多くの人々が最大の利益を得るような、
制度設計が可能になる。

この本では、こういった工夫のことを
「ナッジ」と呼んでいる。

実例として、
資金運用プランの設計、
保険制度の設計、
などが挙げられている。

この考え方は、人々を狙い通りに動かす、
という強力な力を秘めているので、
良心を持った運用が求められる。

以下、メモ。

社会的影響力は二つのカテゴリーに大別される。
第一のカテゴリーは「情報」である…
第二のカテゴリーは「仲間からの圧力」(ピア・プレッシャー)
である…(p91)

つまり、「みんなやってるよ」効果。
「みんな悪いことやってるよ」にしてはいけない。
「みんないいことやってるよ」にするのがポイント。

社会的に望ましい行動にナッジしたいなら、
現在の自分たちの行いが社会的標準レベルよりも
良いことを絶対に知らせてはならない(p114)

え?がんばりすぎた?もっと手を抜こう。
となるから。

制度設計に関わる人には、
ぜひ一読をオススメしたい。
ただ、ページ数多いので注意。

リチャード・セイラー,キャス・サンスティーン
日経BP社 2009-07-09
¥ 2,310

感想メモ:「疲れない身体」をいっきに手に入れる本

★★★★☆

ロルフィングの施術者である藤本氏は、
「五感」の感覚器を活用することが特徴。

私たちの普段の生活では、外の世界との関わりの大部分を
視覚情報を通して行うため、聴覚情報に意識を向けることは、
身体をリラックスさせるのに役立ちます。(p31)

目と耳と口とゆるめると、
身体もゆるんでくるそうだ。
おもしろい!

もっとも手っ取り早いのは、
瞼の上から指で眼球に触れる方法です。(p33)

眼球を動かす筋肉と首の深部筋には、
解剖学的にも神経学的にもつながりがある(p40)

耳の緊張が「頭の芯」を介して横隔膜に伝わり、
横隔膜が固くなっている(p51)

脚を組みたくなったり、貧乏ゆすりしたくなるのは、
脚が身体を支える機能をしていないことが理由です。

耳を引っぱると、頭も横隔膜もほぐれるというのも、
おもしろい。耳なら、やろうと思えばすぐできるし。

仕事でもプライベートでも、
パソコンが日常に浸透している人は、
眼だけでなく頭が慢性的に疲れがち。

うまく疲れを取ってあげたるためのヒントが、
たくさん詰まった本です。

身体についてマニアックに興味がある、
私のような人もオススメです!

感想メモ:ライフ・トラベラー

喜多川 泰
ディスカヴァー・トゥエンティワン 2013-08-13
¥ 1,365

★★★★☆

人生は旅のようなものだ。
という考え方を持ったことは、特になかった。

そんな私ではあるが、この本で言わんとすることは、
とてもしっくりきた。

むしろ、これまでの経験から、現在持つに至った考え方を、
ピッタリと言葉にしてくれていることに驚いた。

著者の喜多川泰さんと考え方が似ているのか、
あるいは喜多川さんの本に影響されてきたのか。
おもしろかったから、どちらでも良いことにする。

<やりたいこと>を<やらなきゃいけないこと>に
変えなければいいだけさ(p64)

目の前にやってくることに全力で取り組めば、
楽しく感じて、その中からやりたいことが湧いてくるんだって(p66)

これから誰かに出会うかなんて、どんなに<損得>を考えても、
将来を計算しても誰にもわかりっこない。
でも、その出会いが中心となってぼくたちは人生を創っているんだ(p73)

いま真剣に取り組んでいることから
情熱を感じるものがあったら何か行動を起こす、
という生き方のほうが、自分が想像している以上の
幸せが手に入る。驚くべき人生が待っている、
とぼくは思うんだ(p74)

タイトルの「タイム・トラベラー」については、
小さい驚きが待っていたので、ここでは書かない。

読んだ感触は「スタートライン」に似ていた。
もっと続きが読みたいのに、終わっちゃったなー、という感じ。

今後も期待してます。

喜多川 泰
ディスカヴァー・トゥエンティワン 2013-08-13
¥ 1,365

感想メモ:採用基準

伊賀 泰代
ダイヤモンド社 2012-11-09
¥ 1,575

★★★★☆

日本に足りないのはリーダーやリーダーシップであると同時に、
「リーダーシップに関する、重要性や必要性の認識」です(p172)

と、マッキンゼーで12年間採用業務を担当してきた著者は言う。

これは、日本にはリーダーシップに対する誤解があり、
その誤解によって、リーダー経験を持つ人が
不足していることに原因がある。

  • リーダーは一人いればいい
  • リーダーが全部やる。他の人は見てればいい
  • リーダーは全員の意見をまとめなければならない
  • リーダーは調整役である

これらはすべて誤解である。

リーダーとは、
成果を出すことを優先する人
のことなのだ。
他のことは、例えチームの和ですら、二の次となる。

目標を掲げ、先頭に立って進み、
行く道の要所要所で決断を下し、常にメンバーに語り続ける、
これがリーダーに求められている四つのタスクなのです(p133)

リーダーの困難さを知っている人ほど、
リーダーをサポートする良いメンバーにもなれる。

リーダーの苦労を知っていればこそ、
リーダーシップを取った勇気ある人が、
何を求めているのかがわかるようになるからだ。

メンバーがリーダーにどこまでついていけるのかということは、
「その成果を出すことに、それぞれのメンバーがどこまでコミットしているか、
成果を出すことを、みんながどれほど重要だと思っているか」
にかかっているのです(p109)

リーダーシップを取るという経験は、決して楽なものではない。
特に初めての場合、様々な苦労を経験するだろう。
でも、それは将来、必ず大きなものとなって返ってくる。

道に落ちているゴミを拾うのだって、リーダーシップ。
そんな小さなところからでも、始めてみよう。

「リーダーシップとは、学び、鍛えるべき資質である」
(Trainable なスキルである)

のだから。

全般的に、その通り、と頷ける本でした。
日本を良くするためにも、多くの人に読んで欲しい一冊です。

リーダーシップについての本は、以下にまとめてあります。
リーダーシップ

伊賀 泰代
ダイヤモンド社 2012-11-09
¥ 1,575

感想メモ:野球の本当のこと、全部話そう!

★★★★☆

ピッチャーというポジションでありながら、
48歳まで現役で活躍した工藤投手。

体のケアやトレーニングについては、
相当の研究家だったという印象。
読んでみて、内容は技術的な内容も豊富で、
その印象を裏付けるものだった。

野球の技術的な内容については、
書き出すと長くなるので、
好きな人が本を読んでみてください。

以下、共感した部分。

なぜプロで長く野球を続けたいと思うのか?
そういったことを自問自答しながら、
不安を打ち消すためにも毎日、
緊張感のある練習をしなくてはいけないのです(p197)

目標と犠牲。この言葉はプロ野球において
表裏一体と言えるでしょう。
目標をしっかりと持ち、それに向かっている人間というのは
寡黙に練習を続けているものです(p198)

「目標と犠牲」は、プロ野球だけの話ではなく、
社会人における仕事のバランスにも言える話。

まず、人以上の量。
その上で、量より質。
というように転換していくのだろう。

為末氏、梅原氏の本に続き、
同じような内容が語られている本が続いている。
感想メモ:勝ち続ける意志力
感想メモ:負けを生かす技術

勝負の道のプロが語る内容は共通している、
という例が、またひとつ積みあがった。

感想メモ:勝ち続ける意志力

★★★★☆

1/30秒のミスも許されないコマンドを、
99%以上正確に入力できる鍛錬を欠かさないという、
日本初のプロゲーマーである梅原氏。

そんな彼も、ゲームを離れて麻雀に行った時期があったり、
介護の現場で働いたりと、様々な経験を積んでいる。

そんな世界トップに立つ彼の、勝負に対する考え方や、
そこに至るまで歩んで来た道について書かれている。

型にはまってしまうのは、失敗を避け、有名になりたいとか、
目立ちたいとか、誰かに認めてもらいたいという願う
欲望ではないだろうか…
結局はその欲望が自分自身を萎縮させてしまう(p145)

ぼくはどんどん失敗したいと思っている。
5年後、10年後もチャレンジと失敗を
繰り返していたいと思っている(p247)

階段を登れば、それが正しい階段であろうが、
間違った階段であろうが、必ず何かが残る…
勇気を出して、積極的に階段を登った者だけにしか
得られないことが、絶対ある(p248)

自分を痛めつけていると、努力しているような気になる。
しかし、そんな努力からは痛みと傷以外の何も生まれてこない…
大切なのは質であって量ではないということだ(p186)

失敗を、成功へのプロセスと考え、許容する。
努力は成果で測られるべきであり、
それは量だけに比例するわけではない。

最近読んだ、為末氏の「負けを生かす技術」と
驚くほど似ている。

陸上競技と対戦ゲーム。
相手はいるものの、究極的には自分との戦い。
試合は一瞬で、大部分を占めるのは、日常の積み重ね。
となると、似てくるのも当然なのだろうか。

無理をせず、背伸びもせず、毎日毎日、
自分にできる精一杯を繰り返していく。
そんな単調になってしまうかもしれない毎日だからこそ、
自分を変化させることを怠らず、
小さくてもその変化を心から楽しみ、
一日一日を味わい深く噛み締める(p177)

道を極めて行くと、ここまで到達するのかと、
深く感じ入った。

日常をしっかり踏みしめるヒントが得られる、
興味深い本でした。

ちなみにこの本は、ちきりんさんが
梅原氏のエントリーを書き始めるきっかけになった本。
「勝つこと」と「勝ち続けること」 – Chikirinの日記

感想メモ:パワー・クエスチョン

アンドリュー・ソーベル,ジェロルド・パナス
阪急コミュニケーションズ 2013-03-22
¥ 1,785

★★★★☆

「質問」はとっても大事。

どんな質問をするかで、得られる情報は変わるし、
質問者に対する印象も変わる。

質問は、全て自分で考え出す必要はない。
良い質問を知っていればいい。
というところに、この本の意味がある。

本の中では、多くの質問が、
エピソードとともに紹介されている。

その中で、最も印象深かったのが以下のもの。

「どんなふうに始めたのですか?」と訊くと、
相手は胸襟を開き、夢中になって
自分のことを話してくれる(p48)

良い質問をするためには、相手に興味を持つこと。
それには、相手の歴史に興味が持てると、
質問に困ることは、おそらくないのだろう。

アンドリュー・ソーベル,ジェロルド・パナス
阪急コミュニケーションズ 2013-03-22
¥ 1,785

感想メモ:やっぱり「仕組み」を作った人が勝っている

自分なしでも回るビジネスを(複数)構築することで、
働かなくても大丈夫な体制を作り上げている人々。

普通に生活していると出会うことはなかなかないが、
間違いなく生息している人たち。

そんな人たちは、何を考え、そうやってその体制を
作り上げるに至ったのだろうか?

前作「「仕組み」を作った人が勝っている」に続き、
異なる人々に取材し、彼らが用いていたシステムの
共通点を導き出し、指針として提示している。

まず、彼らに共通点はあるのだろうか?

取材した『仕組み』所有者全員が、
自分がやっていることを客観的に俯瞰して見て、
『思考』に置き換える作業をしていた(p35)

「たまたまそうなってしまったのではなく、
「自覚的に」そうしていた、ということだ。

ほしくない人に”売る”よりも、
ほしい人を探して勝手に”売れる”状態を作ったほうがいい(p150)

『魅力的な商品を用意し、その魅力がしっかり伝わるようにする』
『その商品をほしい人を探す』
『それを欲しい人の目の前にそっと置いてやる』(p155)

これは外せない、という要素は、
突き詰めると2つに集約された。

【他力】【継続】は思考のマストアイテム…
意識的に組み込むようにするのが、
「仕組み」の必勝パターン(p266〜)

全部自分でやろうとしない。
むしろ、システムから自分を消す。
単発ではなく、継続的に売上が立つようにする。

これが、仕組みビジネスの大きなポイントなのだ。