感想メモ:二宮翁夜話

二宮 尊徳,左方 郁子
徳間書店 1978-11
¥ 1,680

★★★★★

「修身講義録」「人生二度なし」の森信三氏が
思想上大きな影響を受けた本、という流れで読んだ。
これまた、大きな驚きだった。

そもそも、二宮金次郎というと、
銅像のイメージしかない。
しかしそれは、彼の一面を切り取ったものでしかない。

この巻を背負いつつ読書に励む金次郎の姿は、
全部が全部虚像というわけではないけれど、
これはあくまでその後、七十歳まで逞しく生き抜いた
六尺豊かな大男尊徳の出発点でしかないのだ(p26)

ということは、さっぱり知らなかった。

更に、二宮金次郎のすごさは、
実行を重んじた思想家である、ところにあったそうだ。

天に善悪はない。だから稲と雑草を区別せず、
種あるものをみな生育させ、生気あるものをすべて発生させる。
ところが、人道はその天理にしたがいながらも、
善悪の区別をつける… 人道はあくまで人が立てた道だからだ(p45)

人道は天意とは異なる。
人工的に作り上げる道だというの だ。

人道は勤めることを尊しとし、
自然に任せることを尊ばない。
人道で勤めるべきというのは、
己にうち克つという教えなのである(p52)

己にうち克つということは、
我が心の田畑に生ずる草を取り捨て、
我が心の米麦を繁茂させるよう勤めることをいうのである。
これが人道である(p52)

人道は天意ではない不自然なものだから、
放っておくと廃れてしまう。
だから、保つためには、勤めなければならない。

他にも、人生訓と言うべき言葉が並ぶ。

奪うことに益はなく譲ることに益がある、
譲ることに益があり奪うことに益はない、
これが天理だ(p113)

長く富貴を維持し保つ方法は、
ただ私が説く道、推譲の教えがあるだけだ(p119)

大事をなそうと欲すれば、
小さなことを怠らずに努力するべきだ(p173)

ちなみに、これは昭和53年の本!

まだまだ、読んでいない素晴らしい本が
たくさんあるのだろうなぁ。
出会えるのが楽しみだ。

二宮 尊徳,左方 郁子
徳間書店 1978-11
¥ 1,680