2014年はアベノミクスやら消費税増税やらがあり、
GDPの成長率が話題になった年でした。
しかし、「GDPの成長率がどうとかこうとか!」と言っても、
「名目」やら「実質」やら「季節調整」やら何やら、
今ひとつよく分かってない感が湧き上がってきたので、
一つ調べてみようと思い立ちました。
せっかくなので、ついでに
調べてみた結果をまとめてみます。
知らない単語の意味を調べる
こちらが適切な情報であるように思いました。
→第2講 GDPとは
が、ちょっと長いので、簡単にポイントをまとめましょう。
「名目GDP」と「実質GDP」とは?
- インフレ率を考慮しないのが名目、考慮するのが実質
- 名目だと、インフレのときには
生産量が変わっていなくてもGDPが増えたように見える - 実質だと、生産量の違いがきちんと見える、ことになっている
「季節調整済み」とは?
- 消費には定期的な季節変動がある
- 例えば、4〜6月は消費が少なく、10〜12月が多くなる
- この変動を考慮して、季節要因以外でどれくらい増減したのか?
がわかるようにしたのが「季節調整済」 - ただ、消費の季節変動が完全に毎年同じとは思えないので、だいたい、というところなのだと思う
「年率換算」とは?
- その成長率で一年過ごしたら、成長率は何%になる?という数字
- 例えば、四半期の成長率の年率換算なら、ざっくり4倍した数字になる
GDPに含まれないもの
- 最終商品のみ。中間材の取引は含まれない
- 生産されない財とサービスは含まれない(例えば株などのキャピタルゲイン(配当は含まれる))
- 商品価格で評価するので、価格がないものは入らない(家事とか)
- GDPはGross Domestic Productで、減価償却を含む数字(Netだと含まない)
2014年の日本のGDP成長率について考える
2014年は4〜6月期と7〜9月期が、
連続してマイナス成長でした。
個人的には、消費税増税の影響が大きいと思っています。
しかし、そうではなく、
価格高騰による建築の売上減少が
足を引っ張っているからだ、
と言っている人がいたので、
ホンマかいなと調べてみました。
資料は、内閣府の公開資料です。
1が概要、2が詳細なデータで、どちらもPDFファイルです。
まずは1を見て、深く知りたいことがあれば2を当たれば良いでしょう。
それでは、2014年のGDP成長率がマイナスだったのは、
なにが原因だったのでしょうか?
四半期別の実質成長率(季節調整系列)
GDP成長率と言っても、前期だけと比べても仕方がないです。
少なくとも前年同期と比較したいところ。
そこで、下のデータを見てみましょう。
1 のファイルの5ページ目、
「3−1.四半期別の実質成長率(季節調整系列)」です。
これは、「実質」成長率の、「季節調整」済みの数字。
インフレを考慮し、季節変動の影響を除いたもの、
ということでした。
で、数字を見てみましょう。
数字の列の左から5列目、
2014年7〜9月期のGDP成長率(前期比)
を見ると、
-0.5%[-1.9%]
となっています。([]内は年率換算)
これは、
4〜6月期に比べて-0.5%下がりましたよ、
このペースで1年間-0.5%成長を続けると、
4倍くらいになって-1.9%になりますよ、
ということです。
実際-1.9%になったわけではないです。
この「-0.5%」という数字が大事で、
じゃあ、なんで-0.5%なんですか?
消費税が上がったからなんですか?
建築のせいなんですか?
ということが知りたいです。
実質成長率の寄与度
次に、その右の列の、
GDPと年率換算が「*** ***」になっている列
を見てみます。数字が全部()に入っている列です。
これは、「寄与度」で、その-0.5%の内訳です。
ここを見て考えたのは、以下のような感じです
- -0.5%成長は、国内需要合計-0.5%と純輸出+0.1%の合計
- 国内需要合計-0.5%は、民間需要-0.7%と公的需要+0.1%の合計
→GDP成長率-0.5%は、民間需要のマイナスが主要因 - 民間需要-0.7%の内訳は
- 「民間在庫品増加」が-0.6%
- 「民間住宅」は-0.2%
- 「民間企業設備」は-0.1%
- 「家計最終消費支出」は+0.2%
→2014年7〜9月期のGDPマイナス成長率に対しては、
「民間在庫品増加」のマイナスの影響が一番大きい
「民間在庫品増加がマイナス」って何?ということですが、
企業が抱えている在庫を取り崩している、
ということであるようです。
増税前に多めに生産しておいて、
しばらくは在庫の取り崩しで売上を立てている、
という感じでしょうか。
従って、民間在庫品増加のマイナスは、
在庫がはけたということで特に悪いことではない、
という見方もあるようです。
(1)民間在庫品増加のマイナスはむしろ良い
...
さて、生産(供給)と支出(需要)は、普通は一致しません。ではなぜ統計上一致するかというと、たとえば売れ残った分を、将来販売するための投資とみなしているからです。そのため、支出面に民間在庫品増加という項目があります。
今回の統計で、もし、この民間在庫品増加(寄与度-0.6%)を無視すれば、それ以外のみでの実質変化率は+0.2%(年率約0.8%)とプラスになります。
前回、消費税増税があった1997年は在庫品の積み増しが問題でしたが、今回は企業等が増税に備えて、生産調整を慎重に行ってきたのではないかと予想します。そのため、今の時期に在庫品が減少するのは、悪いことではありません。(少なくとも約1ヶ月後の2次速報の確認が必要でしょう。)
7~9月期GDP、大幅マイナスに悲観的になりすぎる必要はない 岡山大学准教授・釣雅雄 | THE PAGE(ザ・ページ)
民間住宅について
- 民間住宅は前期比-6.8%だが、GDP成長率に対する寄与度は-0.2%
- 民間住宅がGDP全体に占める割合が、それほど大きくないのだろう
(GDPの6割は民間消費支出が占める) - 民間住宅は、2012年4〜6月期から2014年1〜3月期まで
8期連続で上がっていた
(+4.7%, +2.5%, +0.9%, +1.0%, +2.2%, +4.3%、+2.2%、+2.3%) - それが2014年4〜6月からマイナスに落ち込んだ
- これも消費税前の駆け込み需要と増税後の買い控えの影響、
つまり消費税増税の影響と見られている
(消費税増税の影響大、住宅着工戸数8ケ月連続減少!)
結局、民間住宅のマイナス成長も、
消費税増税の影響と切り分けることはできず、
むしろ消費税増税の影響が大きいように思えました。
まとめ
- インフレ率を考慮しないのが「名目GDP」、
考慮するのが「実質GDP」 - 季節要因以外でどれくらい増減したのか、
がわかるようにしたのが「季節調整済」 - 「年率換算」とは、その成長率で一年過ごしたら、
成長率は何%になるかという数字 - 日本の2014年7〜9月期のGDP成長率(前期比)は-0.5%
- 一番寄与が大きいのは「民間在庫品増加」
- 民間住宅は、2014年4〜6月期から、8四半期ぶりにマイナス成長に落ち込んだ
- それは消費税増税の影響が大きい
2014年7〜9月期のGDPマイナス0.5%成長という数字については、
「民間在庫品増加」の影響が大きかったようです。
そして、それ自体、悪いこととは言えないようです。
ただ、もっと景気が回復をすることを予想していた場合、
ネガティブなサプライズだったと言えるでしょう。
民間住宅は、確かにマイナス成長ですが、
GDPのマイナスに対する寄与は限定的でした。
そして、民間住宅のマイナス成長も、
消費税増税の影響が大きいという見方が多く、
「GDPのマイナス成長は、消費税増税ではなく
建築が足を引っ張っている」
という見方は当たらないのかな、という印象です。
おそらく、
- 国家財政のプライマリーバランスを回復しないと、
財政破綻するからまずい - 消費税増税は避けられない
- 消費税増税を悪く言いたくない
という思考だったのだろうと思われます。
しかしそれは、
国家財政のプライマリーバランスの議論であって、
消費税増税が果たして今現在取るべき対策なのか、
という議論になるのでしょう。
いろいろ調べて、個人的にはスッキリしました。
読まれた方のスッキリにもつながれば幸いです。