- 「食糧危機」をあおってはいけない (Bunshun Paperbacks)
- 発売元: 文藝春秋
- 価格: ¥ 1,150
- 発売日: 2009/03/26
★★★★★
データに基づいた説得力のある議論
人口増加。資源の枯渇。低い食糧自給率。食糧危機を煽る風説は、世間に一定の理解を得ている。しかしその内容は正しいのか?と聞かれれば、「知らない」というのが普通の人の答えだろう。一方、その問いに「否」と答えるのが本書である。
著者は農水省で世界の食料生産見通しなどの研究を行い、現在東大農学部の助教授をしている識者。タイトルは軽いが、しっかりとデータに基づいた議論がなされていて説得力がある。
- 中国、インドなどの経済成長での食糧消費増加で食糧危機?→NO
→肉を食べる量が増えるという仮定に基づいている。中国の飼育用食糧はブラジル産大豆のしぼりかすで賄われた。インドは肉を食べない。 - 人口爆発で食糧危機?→NO
→アジア主要国の出生率は既に2以下。 - 食糧生産量は限界?→NO
→世界に休耕地は多い。生産効率化も進んでいる地域の方が少ない。食糧生産量は需要に合わせられているだけ。 - バイオ燃料で今後食糧不足に?
→NO。アメリカのバイオ燃料施策は農業保護。トウモロコシはブラジルのサトウキビに価格競争力で勝ち目がない。 - 食糧自給率はカロリーベース。肉の消費量が増えると、飼料が輸入に頼っているため計算上自給率が下がるという寸法。
まとめると、食糧は余っている。買ってくれるところがないから作らないだけ。生産余力は十分ある。食糧の入手先は多様。全ての国が同時に輸出を禁じることは考えられない。よって食糧危機は来ない。
あらまぁ。食糧危機説って農水省のプロパガンダなの?
ということでおもしろかった。良著。オススメの★5つ。
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