内容は、Googleが機械翻訳を変革しようとしているという、そのまんまの内容である。 これはこれで壮大なスケールの話でおもしろいので、興味がある人は読んでみるといいと思う。 しかし、私が気になったのは話の大枠とはあまり関係がない、以下の部分だった。
「これまでのところ、卓越した品質を実現することに重点を置いてきた」とオーク氏。「Googleの全社的方針に基づいて、本当に使い勝手が良く、インパクトのあるサービスを提供できるようになったら、それから収益化の方法が考案されることになる」
つまり、Googleの全社的方針は、以下のようなものだと言っている。
「卓越した品質を実現することに重点を置き、 本当に使い勝手が良く、インパクトのあるサービスを提供できるようになったら、収益化の方法を考案する」
普通は、このように考えることは難しい。
順番が逆になってしまいがち、というかならない方が珍しい。
例えば、価格は競合商品よりも低い方が競争力がつくため、
過剰な品質はコストの上昇に繋がるので避けたくなる。
従って「卓越した品質を実現する」というのは、
目標とするのはタダだが、実際に求めることにはなりにくい。
そして、本当に使い勝手が良く、インパクトのあるサービスを提供できるようになったら、収益化の方法を考案するそうだが、 本当に使い勝手がよく、インパクトのあるサービスができれば、 収益化の方は比較的簡単だということなのだろう。多分広告だし。
確かに、IT業界の特性というものもあるだろう。 具体的なモノを売るわけではないので、 原価や流通などのSCM、在庫管理などのリスクは、 実際のモノを売る場合に比べて低く、 ビジネスモデルに関しても自由度が高い(といってもGoogleは広告収入の割合が非常に高いが)。 それでも、開発への原資は無限ではないし、 それを回収しなければならないという基本的な構図は同じである。
Googleはものすごい勢いで組織が巨大化しているが、 組織としてのアウトプットの質を担保しながら巨大化してくのは、 決して簡単なことではない。 Googleが既に、世界中から優秀な人材を集められるだけの名声を確立したという立場による正のフィードバックを受けられるサイクルに入っているのは確かだが、 組織というのは人材が優秀であれば放っておいてもアウトプットが出て来るというものでもない。
人間が、自分を構成する細胞が数ヶ月で全て入れ替わっても個を保ち続けるように、 組織も人員が変わっても生き続ける「組織の文化」を手にすることで初めて、 組織としてのアイデンティティーを持つことができる。 そしてその文化こそが、構成員の働き方を規定し、 結果として組織が生み出すアウトプットをも規定するものである。
Googleが「本当に使い勝手が良く、インパクトのあるサービスを提供できるようになったら、収益化の方法が考案されることになる」 ということを全社的方針としているということは、まさしく組織の文化である。 本当に使い勝手が良く、インパクトのあるサービスを提供する ことがGoogleの社是なのだろう。
利益を得ることは、 そういったサービスを提供する組織体(Google)を存続させるために必要なことでなのであり、 利益を得ることそのものが組織の目標なのではないという文化が見えてくる。 会社組織というのは、こうあるべきだと昔誰かえらい人が言ってたそうだ。
私はここに、Googleという組織の強さを見た。
エイプリルフールが終わったばかりなのにまじめなことを書いていたら、 知恵熱が出てきたのでもう寝る。