のっぺらぼうの話は皆さん知っているだろう。こんな話だ。
すると、女は立ち上がり、老商人の方へ向き直ると、今まで顔を覆っていた着物の袖をどけ、面をつるりと撫で上げた。
老商人は耳をつんざくような悲鳴を上げた。女の顔は目も鼻も口もない、のっぺらぼうだったのだ。老商人は持っていた提灯を投げ出し、無我夢中で紀の国坂を駆け上がった。後ろを振り返る勇気なぞ、とても出なかった。
しばらくひた走っていると、前方に蕎麦屋の屋台の明かりが見えてきた。老商人はわずかばかりの安堵を感じた。
「大変だ」
老商人は恐怖のあまり喚き立て、蕎麦屋の主人にすがるようにして着物を引っ張った。蕎麦屋はやれやれという感じで、
「どうなさったんですか。まるで追い剥ぎにでもあったような顔をしているじゃないですか」
と、言った。
「いや主人、そうではないんだ。それがその、なんだ、その」
すっかり怯えきっている老商人は息があがっていたため、言葉にならなかった。すると、蕎麦屋は突然、薄気味悪い笑い声を上げながら、
「分かりました。多分、こんな奴に出会したんじゃないですか」
と、顔をつるりと撫で上げ、ゆで卵のようなのっぺらぼうに変身した。
老商人は絶叫し、気を失ってしまった。その途端、明かりが消えた。
参考:のっぺらぼう
ここで老商人は気を失ってしまっているが、
しかし私はこの話はここで終わりではないと考えている。
以下、この新しい説について説明しよう。
この「こんな奴に出会したんじゃないですか」というセリフ、
どこかで聞き覚えがないだろうか。
そう。ルパン三世・カリオストロの城だ。
銭形:ここに俺が来なかったか!
誰か:何!?
銭形:バカヤロー!そいつがルパンだ!俺に化けて潜り込んだんだ!デッカイ図体して変装も見破れんのか!このゴク潰し!!
「こんな奴に出会したんじゃないですか」
「ここに俺が来なかったか!」
→超似てる。もうほとんどそのまんま。
そこで私はこう結論づける。
・蕎麦屋は、まだ言いたいことの半分しか言っていなかった
・あと、「ばっかもーん!そいつがルパンだ!」って言いたかった
・でもじいさん気絶しちゃって言えなかった
・蕎麦屋ものすごいがっかり
図解するとこうなる。
女=蕎麦屋=のっぺらぼう
蕎麦屋=のっぺらぼう≠女=ルパン
そう。女はなんと、のっぺらぼうに化けたルパンだったのだ! という事実に気付いた本当ののっぺらぼうの蕎麦屋は、 残念ながらそれを伝えられずに終わってしまったのだ。 その蕎麦屋の深い失望。それが最後の一文に現れている。
老商人は絶叫し、気を失ってしまった。その途端、明かりが消えた。
この最後の「明かりが消えた」は、蕎麦屋の失望を示していると私は推測する。
「ここからオチなのに何気絶しちゃってるの!蕎麦屋超がっかりもうやってらんない!今日は仕事終わり!終了!帰る!(蕎麦屋明かり消す)」
かわいそうな蕎麦屋。
言うのが楽しみだったオチを聞いてもらえなかった失望は想像するに余りある。
同情の念を禁じえない。
と書いたら、マールさんが2006年5月12日に同じコンセプトの文章を書いていた→マールが2006年5月に書いた文。
でもネタは別に思いついた話だし、せっかくがんばって書いたので載せる。
その途端、明かりが消えた。
参考:ルパンゲームのやり方