Part 3 クリーンエネルギー

エネルギー問題 Part 3


クリーンエネルギーというのは、環境に与える負荷が小さいエネルギーのことです。 このクリーンエネルギーのうち普及が期待されているものとしては、風力発電、太陽光発電などの再生可能な自然エネルギー、 そして燃料電池などがあります。
ここから、これらのクリーンエネルギーについて説明していきます。

3.1 あとは価格だけ--太陽光発電

まず太陽光発電についてです。
これは周知のように、太陽光をパネルで受け止めることから発電するもので、 運転中にもCO2などを排出しない、クリーンなエネルギーとして注 目されています。 製造時のエネルギーを考えても、運転に燃料がいらないことからクリーンなエネルギー生産の手段であると言えます。

太陽光発電は夏の電力使用ピーク時に最も発電量が高まります。 発電所は夏の電力需要ピーク時にあわせて作られているため、 一年間に真夏の数日しか働かない発電所もあり、 逆に夜間は電力が余っているというのが現状です。 原子力発電が出力を調整できないことも、このことを助長しています。
つまり太陽光発電の普及は、ピーク時の電力需要を支えることから、 発電所のムダな建設を避けることもできるのです。

太陽光発電に残された課題は価格だけです。 大量生産によってコストが下がり、国や自治体の援助によって初期負担が百万円以下になれば大きく普及することになる、と言われています。 しかし国の太陽光発電の目標値は、未だ低いままです。 また、98年度の太陽光発電も含めた自然エネルギー関連の予算は特別会計の270億円(住宅用太陽光発電の助成事業では148億円)に留まっているのに対して、 原子力関連の予算は科学技術庁と通産省分をあわせて4962億円にも上ります*7)。 原発の予算の1割でも自然エネルギー関連に振り分ければ、大分事情が変わってくるのですが。
本気で新エネルギー普及を考えるならば、国は補助をもっと充実させるべきでしょう。

『太陽電池は地球を救う』 慶應大学小林さんによるわかりやすい説明です。

3.2 順調な伸びを見せる風力発電

次は風力発電についてです。
風で風車を回すことにより発電する風力発電は、既に北海道など一定方向の風が強い地域で用いられています。 排出物もなく、クリーンで無尽蔵なエネルギーであり、特に運転中に廃棄物を出さない ことから企業も積極的で、普及は順調な伸びをみせています。 その結果、94年の「新エネルギー導入大綱」での2000年までの目標値の2万kWは、97年末に既に達成しています。
にもかかわらず、98年6月に出された総合エネルギー調査会の長期エネルギー需要見通しでは2010年に基準ケースで4万kW、 対策ケースで30万kWという低い見通しとなっています。 94年に新エネルギー総合技術開発機構(NEDO)が作成した「風況マップ」によると、 日本の開発可能な風力資源量は3500万kWで、すべてが利用されれば電力需要の3.8%、 約340億kW時がまかなえるということです(*8)。 多くの企業や自治体が風力発電に積極的なので、国ももっと風力発電に力を注ぐべきでしょう。

3.3 大きな可能性を秘めた燃料電池

燃料電池とは、水素と酸素を反応させることにより電気と水ができるというもので、電池ではなく発電機といったほうが適切です。
特徴としては、一つは熱に変換せずに化学的に電力を発生させるために、エネルギー効率がよいこと。 もう一つは廃棄物が水だけ、というクリーンなものだということです。 現時点では水素をそのまま保存するのが難しいため、メタノールなどの燃料から水素を作り出すことになり、 その過程でCO2が発生します。しかし前述のようにエネルギー変換効率が高いために通常の火力発電などに比べて環境に与える負荷が小さくなります。
またタービンやエンジンがないために騒音や振動が少ないため、前出のコジェネレーションに最適です。 このコジェネレーション方式の発電では、電力の発電と消費が近くで行われることから、送電のロスが少なくなるという利点もあります。 これを分散型発電と言い、これまでの集中型発電に代わる方式として注目されています。

この画期的な技術である燃料電池は、まさに次世代の発電システムとして有望視されています(といっても原理的には昔からあるのですが)。 通産省も官民共同の科学技術振興政策"ミレニアムプロジェクト"の柱として「燃料電池開発を促進」をおき、 概算要求基準で決まった2500億円の"経済新生特別枠"の目玉にしようとしています。 燃料電池は自然エネルギーにくらべると、国も力を入れています。
(燃料電池の種類についてなど、もう少し詳しい説明がJGA/天然ガスで発電する燃料電池についてにあります。)

現在商用化されているのはリン酸型燃料電池(PAFC) で、 都市ガス会社などにより普及が進んでいます。
また固体高分子型燃料電池(PEFC)次世代型の自動車エンジンとしてダイムラー・クライスラー、トヨタなど 多くの自動車メーカーにより開発が進められており、既にドイツではこの燃料電池を動力とするバスが走っています。
DaimlerChryslerFCプロジェクト総括責任者のフェルデイナンド・パニク副社長は「熱効率はガソリンが15%、デイーゼルが24%であるのに対して、 FC(注:燃料電池)は37%であり、製造コストでもガソリンエンジンを凌駕するであろう」と語っています。 また燃料電池はNOx、SOxゼロ排出、CO2もメタノール改変式のもので3割程削減できます。 将来的に水素を燃料として用いるようになれば、CO2排出もゼロという、まさにゼロ・エミッションになるでしょう。

カナダの燃料電池メーカーのバラード社は、既に固体高分子型燃料電池の大量生産に入りました。 近いうちに値段も下がり、分散型家庭用発電機も含め、大きな市場を形成することになるでしょう。

3.4 まとめ

ここまでエネルギー問題と、それを解決するためにこれから用いられる優れた技術や発電法について説明してきました。 しかし、私達がただ見ているだけでは、国の方針通り原子力発電所は増え問題は解決しないでしょう。

では私達一般の生活者には何ができるのでしょうか?その答えの一つとなるものが、グリーン電気料金制度です。

次は、現在の電力自由化に向けた動きとグリーン電気料金制度、そしてそれによって私達に何ができるのかを考えていきます。

Part 4 グリーン電力制度