- 誘惑される意志 人はなぜ自滅的行動をするのか
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- 発売元: NTT出版
- 価格: ¥ 2,940
- 発売日: 2006/08/30
★★★★☆
なぜ人は自滅的な行動をするのか?
体に悪いとわかっていても、タバコやドラッグをやめられない。
損をするとわかっていてもギャンブルをやめられない。
いいことだとわかっていても、ダイエットやトレーニングの決意は
1週間でなかったことになってしまう。
こういった人の習性は、経済学が前提とする効用理論とは矛盾する。
効用理論では「人は自らの利益(効用)を最大化する」とするが、
実態は明らかに最大化しない行動をとるからだ。
人はなぜこのような自滅的な行動をするのか?
こんなやっかいな問いに、本書はシンプルな理論で正面から説明してくれる。
本書の基となる理論は
「双曲割引とその加算性」
だけである。
単純に言えば、「ハイパー朝三暮四」+「正のフィードバック」とでもなろうか。
双曲線は指数関数よりも減衰が激しいので、
未来の損失を過小評価してしまうので、目の前のお菓子を食べてしまう。
そして一度食べると、次から食べることに抵抗がなくなってしまう、など。
おもしろい。
以下、メモ。
- 効用に基づく理論は、選択の多くの側面をうまく説明するが、
自己破壊的な行動の存在も、それを防止する仕組みも登場の余地がない。 - 人も下等動物も直感的には、将来のできごとを
期待される待ち時間に反比例して評価する。 - 双曲線は、多くの効用理論が前提とする指数曲線よりも
しなっているので、そこから出てくる選好パターンは、
効用理論的には不合理となる。 - つまり痛みというのは、癖の周期を急速にしたものでは
ないだろうか。ちょうど、癖というのが中毒の周期を
急速にしたものであるのと同じことだ。 - 意志は自己フィードバックを持った仲介プロセスなので、
そのフィードバックにより生じるカオスのために、
わずかな違いがすさまじい結果の差を生み出す。 - ルールーつまり強い意志に従って何かをやるのは、
往々にしてその行為自体の喜びを奪ってしまう。 - 意志の働きにより合理性が高まったために、
満足度が減ってしまう行動というのもたくさんある。
著者は「この本はわかりやすいように口語体で書いた」というが、
訳者の山形浩生氏が言うように、全くわかりやすくない。
その代わり、山形氏の「訳者解説」が内容を簡潔にまとめていて
とてもわかりやすい。
なので、この解説から読むことをおススメする。
内容は興味深いのだが読みにくいのが難点。
ということで★1つ引いて★4つ。
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